障害福祉におけるエンパワメント:パターナリズムからの脱却と自己決定

エンパワメントを「力」の回復として捉える

「エンパワメント(Empowerment)」という言葉は、単に誰かに権限を与えることだけを指すのではありません。本来は、社会的な制約や抑圧の中にいる個人やグループが、自分自身の人生を自分でコントロールする力を取り戻し、社会を変えていくプロセスそのものを意味しています。

これまでの障害福祉の世界では、専門家が「守るべき対象」として障害のある方を管理する「パターナリズム(父権的保護主義)」が中心でした。しかし、エンパワメントの視点は、障害のある方を「支援を受ける客体」から、自らの権利を使い、人生を選択する「主体」へと変えていくことを私たちに求めています。

1:心と組織、そして社会が変わっていくプロセス

エンパワメントは、個人の心の変化だけでなく、多層的な広がりを持つものです。

  1. 心の内側からの変化(心理的エンパワメント): 知的障害やASDを持つ方々が、過去の失敗経験や「やってもらって当たり前」という環境の中で抱いてしまった「どうせ自分にはできない」という学習性無力感を克服するプロセスです。自分には強みを何かに変える力があるという「自己効力感」を育むことが最初の一歩になります。

  2. 関係性と組織の変化(組織的エンパワメント): 支援現場において、職員が「評価する人」から「共に歩むパートナー」へと変わることです。例えば、アセスメントの結果を本人に丁寧にフィードバックし、一緒に未来を話し合うプロセスそのものが、これにあたります。

  3. 社会の仕組みの変化(構造的エンパワメント): 個人の努力に頼るのではなく、社会の側にある壁を取り除いていくことです。合理的配慮を当たり前のルールとして整え、誰もが情報や資源にアクセスできる環境を作っていくソーシャルアクションも含まれます。

2:知的障害・ASD支援における「選ぶこと」への支え

知的障害やASDを持つ方々にとって、エンパワメントの核である「自己決定」を行うには、特有の難しさが伴うことがあります。

自分の気持ちを言葉にするのが難しいとき、支援者はついつい「本人のためだから」と代わりに決めてしまいがちです。しかし、今の支援に求められているのは、判断能力の有無を問うことではなく、「意思決定支援(Supported Decision Making)」の質を上げることです。

例えば、ASDの方の「こだわり」を単に困った行動として直すのではなく、それを「自分を落ち着かせる大切な手段」や「仕事に活かせる強み」として捉え直すことは、本人の自律性を守る立派なエンパワメントです。時間をかけて(1年、あるいは3年といった長いスパンで)、本人が納得して選べるプロセスを作っていくことが、本当の意味での自立に繋がります。

3:強み(ストレングス)に光を当てる

エンパワメントを支える考え方に「ストレングス・モデル」があります。これは、その人の「できない部分(欠点)」を探すのではなく、その人が持っている「資質、才能、周りの環境にある資源」を最大限に活かそうとする考え方です。

知的障害を持つ方が運動(水泳、パークゴルフ、スキー、バスケット、ランニングなどなど)を通じて「自分の体を思うように動かせる」という実感を持つことは、身体を通じたエンパワメントです。そこから得た自信は、困難を乗り越える力(レジリエンス)を強くしてくれます。「守られる人」という枠を超えて、一人の「働く人」や「一市民」としての自信を育む過程こそが、エンパワメントの理想の姿と言えるでしょう。

結論:支援者が大切にしたい「寄り添い方」

エンパワメントを実践する上で、私たち支援者が一番気をつけたいのは、「本人の持つ力を奪わない」という姿勢です。私たちの役割は、本人が自分の人生という大舞台で主役として輝けるように、「舞台装置を整えること」や「黒子としてそばで見守ること」にあります。

障害福祉におけるエンパワメントとは、単なるきれいごとではありません。日々のアセスメント、支援計画、そして何気ない会話の中で、本人の小さな「声」に耳を澄ませ、選択の機会を粘り強く保障し続ける「対話の積み重ね」なのです。本人が社会という広大な海で、自分自身の舵を握り、確信を持って進んでいけるように。その歩みを支えることこそが、私たちが目指すべき福祉の姿ではないでしょうか。

(GoogleAIが原文作成し公認心理師が加筆しました)

次へ
次へ

知的発達症とASD特性を考慮した下肢筋トレ継続の心理的メカニズム