就労アセスメントツール BWAP2の実際と活用方法

BWAP2が現場にもたらす実践的価値

こんにちは、ぽぷら事業所の公認心理師です。BWAP2は、知的障害や発達障害を持つ人々の就労の持続可能性に直結する行動を客観的に評価する標準化ツールです。その最大の価値は、日本の就労支援現場において、特別な資格を要せず、サービス管理責任者や支援員が約15分という短時間で、行動観察に基づく科学的なデータを提供できる点にあります。

本稿では、BWAP2をアセスメントの核として活用する際の、具体的な実施手順、そして支援課題の抽出に至る客観的根拠に基づく実践的プロセスを考察します。

アセスメントの実施前準備と信頼性の確保

BWAP2の評価結果の信頼性は、実施前の準備と実施中の客観性の確保にかかっています。

1.1 導入準備と実施体制の構築

BWAP2をフォーマルアセスメントとして効果的に導入するためには、以下の準備が必須です。

  1. マニュアルの入手と学習:まず、書籍(日本語版マニュアル)を取り寄せることが第一歩です。マニュアルには、63項目の評定基準、ワークサンプルの設定方法、およびプロフィールシートの解析方法が詳細に記載されています。

  2. アセスメント実施者:就労継続支援B型の場合はサービス管理責任者(サビ菅)が中心となってマニュアルを十分理解してから始めることが、評価の質的保証の観点から不可欠です。サビ管は、評価者間の評価基準の一貫性(信頼性)を確保するための研修指導と、評価のモニタリングを行います。

1.2 実施者の役割と姿勢

実施者は、評価者バイアスを排除するため、評価中の自身の主観や過去の経験を切り離す必要があります。BWAP2は、HA、IR、CO、WPの4指標に基づく63項目の具体的な行動に焦点を当てることで、実施者が抽象的な判断ではなく、観察可能な事実のみを記録します。

この客観性を担保するため、アセスメントのトレーニングも兼ねて数回実施をして評価を出すことも、初歩の段階では必要かもしれません。複数回の実施を通じて、評価者はツールの尺度に習熟し、評価者間の一致度を高めることが可能です。

フォーマルアセスメントの実際とデータ記録

BWAP2の実施手順は、対象者の行動観察と、評定記録を統合する点に特徴があります。

2.1 フォーマルアセスメントと採点基準

対象者の就労スキルを、以下の順で4つの主要な領域(HA, IR, CO, WP)に分けて評価していきます。

  1. HA(仕事の習慣/態度)

  2. IR(対人関係)

  3. CO(認知能力)

  4. WP(仕事の遂行能力)

各行動項目は、観察可能な行動の頻度や強度に基づき、一項目につき、0点から4点の範囲で評価します。この段階で得られるのは「粗点」であり、実施者の主観を極力排した客観的な評価が求められます。

2.2 具体的な項目例:客観的尺度の適用

BWAP2の特徴は、主観的な印象を排除した具体的な評価基準にあります。

項目の例として、「出勤率」における過去20日間の欠勤頻度を評価する場合の尺度は以下の通りです。

  • 5日以上の欠勤:0点

  • 3日~4日の欠勤:1点

  • 2日の欠勤:2点

  • 欠勤は1日だけ: 3点

  • 常に出勤、欠勤なし: 4点

このように、評価は抽象的尺度ではなく、具体的な「欠勤日数」という客観的尺度に基づいて行われます。

2.3 評価結果の換算とプロフィールシートへの記入

アセスメントが完了した後、検査結果として、4つの領域ごとの項目評価(粗点)を合計します。この粗点を、プロフィールシートにマニュアルの換算表を参照しながら、Tスコア・パーセンタイル値・ワーププレイスメント・ワークサポートを記入します。

Tスコアやパーセンタイル値に換算することで、対象者の行動特性が標準集団と比較してどの水準にあるかか明確になり、このデータが支援課題の検証と分析の基礎となります。

プロフィールシートを活用した支援課題の抽出

BWAP2の真価は、プロフィールシートによる分析と、それに基づく支援の見立てや現状と課題を見ることができます。

3.1 ワークプレイスメント

BWAP2の重要なアウトプットの一つにワークプレイスメント(現在の職業能力レベル)の導出があります。ワークプレイスメントは、利用者の現時点での職業行動能力に基づき、以下の5つのレベルを導き出します。

  • デイケアレベル(生活介護)

  • 作業所レベル(就労継続支援B型)

  • 福祉就労レベル(就労継続支援A型、就労移行支援事業所)

  • 就労移行レベル(就労移行支援事業所、就労・生活支援センター)

  • 一般就労レベル

このレベル分けは、対象者が目指すべき次のステージや、現在の環境の適合性を判断する客観的な根拠を提供します。

まとめ

BWAP2は、特別な資格を必要とせず、対象者の方をよく知っている人であればだれでも実施者となれるという実務的に汎用性が高く、就労支援現場における客観的な行動特性評価ツールとして、極めて優れた就労アセスメントツールであると評価できます。ぽぷら事業所では、2021年より就労継続支援B型利用者のフォーマルアセスメントツールとして活用してます。2023年度より、ソーシャルワーク実習(社会福祉士実習)において、学生がBWAP2を学び、アセスメント実施に関する研究の場を提供してます。

参考文献

  • 発達障害の人の就労アセスメントツール BWAP2 日本語版マニュアル&質問用紙:合同出版(2021)

次回予告

次回は、BWAP2の評価結果に基づいた具体的な活用事例について考察します。

(GoogleAIが原文作成し、公認心理師が加筆しました)

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