こんにちは、ぽぷら事業所の公認心理師です。キャリア形成の理論に「計画的偶発性理論」があります。それは、キャリアのほとんどは「偶然の事象」によって決まるという理論です。
計画的偶発性理論とは?
計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)は、1999年にスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱したキャリア形成の考え方です。この理論の中心にあるのは、「個人のキャリアの8割は、予期せぬ偶然の出来事によって決まる」という事実です。
しかし、この理論は「運任せで良い」と説いているわけではありません。偶然の出来事をただ待つのではなく、自ら積極的に行動して偶然を引き起こし、それを自身の成長やキャリアのチャンスとして最大限に活かすための考え方なのです。
人生をスポーツの試合に例えるなら、勝つための緻密な作戦(キャリアプラン)を立てることは大切です。しかし、それだけでは不十分です。試合の流れを変える予期せぬアクシデント(偶然の出来事)や、相手の予想外の動きにも、瞬時に対応できる柔軟な判断力や、ピンチをチャンスに変える瞬発力が求められます。この理論は、単に計画通りに進めるのではなく、目の前の出来事に臨機応変に対応し、試合全体を有利に進める姿勢こそが重要だと説いています。
この理論では、偶然を味方につけるために、以下の5つの行動特性が重要であるとされています。
好奇心(Curiosity):常に新しいことや未経験の物事に興味を持つ
持続性(Persistence):困難に直面しても諦めずに努力を続ける
柔軟性(Flexibility):状況に応じて考え方や行動を柔軟に変える
楽観性(Optimism):未来を肯定的に捉え、「きっとうまくいく」と信じる
冒険心(Risk Taking):結果が不確かでも、リスクを恐れずに挑戦する
これらの特性を日々の業務で意識することで、偶然の出会いや出来事が、キャリアを豊かにする大きなきっかけになると考えられています。
障害福祉サービス事業所での具体的な取り組み
私たちの障害福祉サービスの現場は、利用者さん一人ひとりの個性やその日の体調、環境によって、常に状況が変化します。マニュアル通りにいかない場面も多く、まさに「偶発的な出来事」の連続です。計画的偶発性理論は、このような現場で働く職員の育成に非常に有効です。
1. 新しい支援方法への挑戦を促す
「この利用者さんには、もっと良い支援方法があるのでは?」という好奇心を大切にし、新しいアプローチに挑戦できる環境を作ります。たとえそれがうまくいかなくても、失敗を「学び」として捉えることで、職員の持続性と冒険心を育てます。
2. 固定観念を打ち破る
「このやり方が当たり前」という固定観念を捨て、多様な意見を歓迎する風土を作ります。職員が柔軟な発想で支援方法を検討できるよう、職員Mtg(ミーティング)やオンラインChatMtgで自由に意見を出し合える場を設けることが有効です。ぽぷら事業所はGoogle Workspaceを活用しています。
3. 職員の成長機会を意図的に増やす
「たまたま参加した研修やイベントが、自分のキャリアを変えるきっかけになった」というような偶発的な出会いを意図的に作り出します。例えば、
外部研修への参加を積極的に推奨し、他事業所のスタッフや専門家との交流を促す。
AIや最新テクノロジーなどの勉強会を企画し、新しい知識に触れる機会を増やす。
いつもと違う業務や行事、チャリティイベントにも積極的に参加させ視野を広げる。
このように、計画的偶発性理論を人材育成に取り入れることで、職員は予期せぬ出来事を恐れるのではなく、「どうすればこの状況を乗り越え、自分の力にできるか」と主体的に考えられるようになります。結果として、サービスの質の向上と、職員の自律的なキャリア形成に繋がるでしょう。
■ キャリア形成の第一歩をサポートします
ぽぷら事業所の公認心理師が、育成会会員(職員)のサポートとして、心理とキャリア形成についてご相談を受け付けてます。
お悩み相談だけでも大歓迎です。お気軽にお問い合わせください。