公認心理師に聞く!アセスメント:機能・適性・認知の統合的活用
こんにちは、ぽぷら事業所の公認心理師です。今回はアセスメントについて考えます。障害福祉サービス事業所におけるアセスメントは、単なる能力測定ではなく、利用者の就労、生活、および社会適応を最大化する個別支援計画の策定を目的とします。特に知的障害や発達障害を持つ方々への支援では、標準化された客観的評価(フォーマル)と、日常的な観察(インフォーマル)をシームレスに連携させることが不可欠です。
1. フォーマルアセスメントの三つの柱
当事業所でのフォーマルアセスメントは、利用者の特性を多角的に把握するため、以下の3つの異なる領域を評価します。
① WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale):認知構造の解明
目的: 知的機能の全体像と、学習スタイルおよび認知のボトルネックを把握します。FSIQ(全検査IQ)の数値以上に、VCI(言語理解)とPRI(知覚推理)の優劣や、WMI(ワーキングメモリ)・PSI(処理速度)の低さといった認知プロファイルの散らばり(スキャッター)が重要となります。
支援への示唆: WAIS結果は、指示の出し方(口頭指示か、視覚支援か)、作業ペース(PSI)、強度行動障害の誘発要因(WMI負荷)を特定する科学的根拠となります。
② BWAP2(ベッカー式職業評価プログラム):職業適性の特定
目的: 利用者の現実的な職業興味、作業能力(適性)、および作業遂行上のパーソナリティを評価します。WAISが「何ができるか」を測るのに対し、BWAP2は「どのような仕事に向いているか」を測ります。
支援への示唆: データ処理、対人サービス、事務作業、手先を使う作業など、多岐にわたる領域で適性を客観的に評価します。就労Bでの具体的な作業への適応可能性、就労系事業所(就労A、就労移行等)のマッチングの方向性を決定づけます。
③ MSPA(適応行動・行動特性評価):社会機能と行動傾向の把握
目的: 日常生活における適応機能のレベル(例:コミュニケーション、社会性、セルフケア)と、問題行動(強度行動障害を含む)の頻度を把握します。
支援への示唆: MSPAの結果は、CBT(認知行動療法)や行動分析の目標設定の基礎データとなります。特に、就労の場での感情調整能力や対人スキルの度合いを客観的に示し、個別支援計画における課題を明確にします。
2. フォーマルとインフォーマルの統合的活用
フォーマルアセスメントが提供する客観的データは、日常のインフォーマルアセスメント(観察、面接)とクロスチェックすることで、より高度な分析と評価が可能となります。
認知プロファイルと職業適性の架け橋
事例: WAISでPRI(知覚推理)が高く、VCI(言語理解)が低い利用者が、BWAP2で「手先を使う作業」と「事務作業」に高い適性を示した場合、支援戦略は明確になります。複雑な口頭指示(VCIの弱点)を避け、視覚的な手本(PRIの強み)を多用した、集中力を要する手作業(BWAP2の適性)を割り当てることで、本人の有能感と作業効率を最大化できます。
課題の特定: 逆に、BWAP2で適性が高くても、WAISのWMI(ワーキングメモリ)が低ければ、作業手順を覚えることが困難であると予測できます。これは、作業を「より細分化」し、外部化された視覚的なチェックリストを用いる根拠となります。
行動障害へのアプローチ
MSPAで高い支援が課題が示されても、WAISの認知特性がその原因であることを考慮しなければなりません。 MSPAの結果(問題行動の発生)をWAISの結果(認知負荷の高さ)と照らし合わせることで、「問題行動は、単なる反抗や支援拒否ではなく、認知的な限界や負荷によるフリーズ(またはパニック)である」という解釈に至ります。これにより、支援の方向性が「問題行動に対する注意・指導」から「環境調整と安心の提供」へと転換されます。
まとめ
障害福祉サービス事業所におけるアセスメントは、WAIS、BWAP2、MSPAといった異なる機能を持つ検査を統合的に活用することで、利用者の認知的な限界、職業的な可能性、そして行動特性の背景にある心理的要因を深く理解します。このアプローチこそが、科学的根拠に基づいた、個別支援計画策定の鍵となります。
(GoogleAIが原文作成し公認心理師が加筆しました)